こんにちは。桜が散り始めた年度はじめ、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は、第2回目。第2館目の紹介です。
施設名:静岡市立芹沢銈介美術館
場所:静岡市駿河区
設計:白井晟一
地元静岡市の美術館です。
人間国宝でもあった故芹沢銈介の作品や収集品を展示している美術館で、日本の歴史教科書にはよく出てくる弥生時代の登呂遺跡がある公園内に静かに建っています。建物周囲を木々に囲まれていて、油断すると通り過ぎてしまいそうなのですが、建物の高さを抑えて、景観に馴染んでいるとも言えます。ここで特徴的なのが、外壁に使われている石と美術館の中心にある池(水盤)です。
この建物は別名「石水館」とも呼ばれ、石や水、木といった自然素材をふんだんに使っています。設計者である白井晟一自らが名付けた紅雲石という大理石の印象は、ずっしりとしながらも、どこかやわらかく、ずっと変わらない普遍的な存在感があります。
私は、ここのアプローチがとても好きです。出入口と思しきところを探しながら石が敷かれた通路の分かれ道で左にふと目をやると、まず一本の木と水盤(というか池)が来館者を出迎えてくれます。
そして、先に進んでもう一度左に折れると、少しずつ緩やかに下る階段(スロープ)があり、その先がエントランスになっています。この美術館は段差が多いのも一つの特徴かと思います。動きのある空間は面白いと思いますが、今では、バリアフリーの観点から、(公共の施設は特に)床の段差は出来るだけないほうが良いとされています。このあたりは難しい問題ですね(笑)。
内部は、外部と同じ石が床、壁に使われていて、重厚感があります。また、天井はナラの無垢材でやってあるのですが、よく見ると手斧で削った仕上げがわかります。これは全て人の手によるというから凄い労力!
アプローチの水盤(池)を囲むように展示室が配置されていますが、この回遊性も良い空間には必要な要素だと思います。美術品を保護するために、池側の窓は全てカーテンによって閉じられています。でももし、自然光で見ることのできる作品であったらまた違った空間になるのだろうなと想像します。
設計は白井晟一です。日本では丹下健三との対比で語られることの多い巨匠の一人ですが、前回のルイス・カーン同様、建築をやっていない人にはあまりなじみがない名前かもしれません。
白井晟一はドイツで哲学を学んでいました。建築は帰国してから独学で始めました。また、書道にも精通していて、本も出しています。人間の内面と向き合い、それを建築として表現した人物で、好きな建築家の一人でもあります。
この美術館は晩年の代表作の一つですが、他に渋谷にある松濤美術館も同時期の白井晟一設計の建物で、こちらにもとても印象的な池(吹抜け空間)があります。
静岡にお住いの方も、案外知らない芹沢銈介美術館。おススメです。
まだ行ったことがない方はぜひ訪れてみて下さい。
今回はこの辺で。
次回をお楽しみに。
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